2021/10/10 11:00
皆さま、こんにちは。
ホテル カンラ 京都 コンシェルジュ杉山でございます。
今回、当館でも設えております京都の伝統工芸作家さんの作品のご紹介や、
作家さんご自身の作品に対する想いを通して、
伝統工芸の素晴らしさを皆様にご紹介していきたいと思います。
すばらしい伝統工芸作品が、オンラインでも手軽に買える時代。
今までは直感で選んでいたものでも、これからは作家さんの人柄や想い、
様々な視点から選ぶ楽しみが増えるかもしれません。
さて今回ご紹介するのは、客室のお湯呑を作陶していただいている、加藤美樹氏です。
(※本館客室の一部で、ご使用いただけます。)
インタビューをさせていただき、とても柔らかい雰囲気をお持ちで、
話しやすい人柄の方でございました。
話もつい脱線してしまうほど弾み、色々と今回お話をお伺いすることができました。
- 絵を描くことが好きだった子ども時代 -
加藤氏の出身は神戸の海沿いの町。
小さいころから絵を描いたり、ものを作ったりする事が好きで、
好きな事にはとことんのめり込んでしまう事が多かったそう。
人物画から風景画まで、色々と描いていたと仰っていました。
美術や図工などはずっと好きで、先生とも仲がよかったとか。
そして先生の薦めもあり、高校はデザインの学科へ進学されました。
- 京都に移り、陶芸の道へ -
大学進学をキッカケに京都へ出てこられ、陶芸と出会います。
陶芸を専攻された加藤氏は、
最初は「絵とかよりも、実用的なので生計をたてやすいかも。」
と思ったそうです。
大学卒業後は訓練校を経て、
清水焼の窯元で仕事をしながら、共同作業場で自身の作陶活動をされていました。
加藤氏は「環境、周りの人に恵まれていた」と何度も仰っており、
副業禁止が普通の時代に窯で働きながらも、作家活動を許される環境にいたことは、
大変恵まれており人生の中でも大きいポイントだったのだなと、聞きながらに感じました。
現在の作風に至るまでには、簡単ではなく少し時間がかかったそうです。
最初は呉須の絵付けに挑戦していたそうですが、納得がいかず、試行錯誤し辿り着いたのが
「いっちん」の技法だったそうです。
- 独立し、見つけた自分らしさ -
<いっちんを施した作品>
加藤氏のいっちんの模様は、他では見ないような独特な模様ばかりです。
例えば、昔から描いていた動植物や、仏教などの宗教美術などをモチーフにしたもの。
自身のスタイルを確立するためにも陶芸だけでなく、アートなどの他の作品も見て感性を磨いていると仰っており、
「すき」をかたちにする難しさと楽しさを知ることが出来ました。
”京ものユースコンペティション”という、京都の伝統産業に携わる若手人材を発掘して支援する大会で2017年に見事グランプリ受賞。3度目の応募で念願の受賞だったそうで、後輩に先を越されたりするなど、
悔しさと挫折を乗り越えて「自分らしさ」を見つけて磨いてきた結果でした。「悩んだ数だけ、自分らしさへと繋がった」と仰っておりました。
- コロナ禍とこれから。 -
コロナ禍で、自分の作品と向き合う時間が更に増えた、と仰る加藤氏。
その中で「らしさ」がより加藤氏の中でより明確になり、ただ「らしさ」に固執して
頑固になるのではなく、色々な意見を取り入れる柔らかさも必要だ、と仰っておりました。
「これまでの人たちがつくってきたレール、固定概念に収まるよりも、新しい自分の道を作っていきたい。」と、熱い想いを語ってくださいました。
とても謙虚で柔らかい雰囲気を持ちつつ、且つ自分の芯を強く持っている魅力たっぷりの加藤氏。ホテル カンラ 京都は、これからも工芸作家さんを応援していきたいと強く思った日となりました。